お知らせ

「これまで」と「これから」

ホテルのような高齢者施設

その奥様が豪華な格式のある高齢者施設へ入居を決められたのは、シェフのいる天井の高いレストランの食事スタイルを気に入られたから。私も初めて訪れたときは瀟洒なエントランスの造りと駐車場係の洗練された制服姿にまるで高級ホテルのようだと感じました。こんなに素敵なところに入居できるのは羨ましいです。

食事スタイルの変化

さて、こちらの奥様が特に気に入られたポイントは食事面です。毎食レストランで召し上がられるわけですから食事の用意は要りません。そうなると食事面に関してこれまでの生活スタイルとはガラリと変わります。「これまで」と「これから」を分けて考えて荷物を選定する必要があります。

デパートのような品揃え

女性は調理道具がとかく多いものです。こちらの奥様は珍しい調理道具をたくさんお持ちでした。例えば鍋。一般家庭には珍しい寸胴鍋に始まり、圧力鍋、行平鍋、銅鍋、鉄鍋、土鍋、電子レンジ専用鍋、ル・クルーゼなどその種類もさることながら、サイズは大中小揃っておりました。

その家は注文建築でしたから天井までしっかり収納戸棚が作ってあり、キッチンの裏手には大きなストックルームが2つ、さらに床下収納もありました。とにかく広い収納スペースにありとあらゆる調理道具がずらり。私にもその使い方を説明してくださいます。

さぞかしお料理好きな方と思いきや、「実はお料理は好きじゃないの、珍しい調理道具を集めるのが好きなの」と笑いながら仰り、驚かされました。「物だけでお料理好きなどと判断してはいけないのですねー」と二人で笑い合いました。

充足すべきところは

いよいよ施設に持っていくキッチン用品を選定する段になり、奥様はあれもこれも持っていくと言われます。頭では必要ないとわかっていても、いざとなると手放せないものなのです。入居されるお部屋には小さなキッチンがついているだけ。

これまで通りティータイムは楽しめると思いますが、これからは料理をする必要はありません。奥様のご要望通り持っていくとキッチンが溢れかえってしまうのは目に見えています。「三食とも施設で提供されたものを召し上がられるのでしたら、これから調理道具はそこまで必要ないと思いますよ」とお伝えし、ご愛用のティーセットを充実していただきました。

「これから」を楽しく生活していただくためには、「これまで」を整理しつつ、形を変えていくことが大切です。奥様はきっと今頃は優雅で豊かな時間をお過ごしになられていることでしょう。