お知らせ

開けない箱の行方

すぐ開ける箱・開けない箱

引越作業にはなくてはならない箱、段ボール。
通常はほんの数時間でその役目を終えますが、なかには何年にも渡り役目を終えない(終えられない?)段ボールもあります。
小さなものやガラスや陶器などの壊れやすいものはそのまま運ぶわけにはいきませんので、エアーといわれる緩衝材(いわゆるプチプチ)や、クレープと言われるやわらかい紙を使いながら、一つひとつ丁寧に梱包し、段ボールに詰めていきます。
段ボールをクラフトテープで封をしたら、誰が見てもわかるように中に何が入っているのか、割れ物かどうかなどを上部と側面に大きな字で書いておきます。
複数の人が運搬作業に携わりますから、とても大事な作業です。
が、ここでもう一つ重要な表記があります。
それは、「すぐ開ける」というものです。
わたくし達は荷造りから荷解きまで一貫してお手伝いをさせていただいておりますが、開梱作業は、「すぐ開ける」箱から順に荷解きしてまいります。
文字通り、すぐに使うもの、使いたいもの、なわけです。
中身を取り出され空っぽになった段ボールはその場で折り畳まれ回収します。

あるお客様から、「すぐ開ける」表記のほかに「開けない」という表記もしてくださいと頼まれました。
「開けない」箱には何を梱包したかというと、アルバムと手作りの資料でした。
しめて段ボール8箱分。
とても重たい箱です。
サービス付き高齢者住宅のお部屋にそれは静かに積み上げられました。
こうしてお引越しをされると、すぐに開けない段ボールが少なからず出てきます。
「開けない」というご指示でしたので、わたくし達の手で開けることはなく、お客様に委ねられます。
そのあとご家族の手によってそれは開梱されたかもしれませんし、そのままになってしまったのか、その先どうなってしまったのかはわかりません。

得体の知れない段ボール

ある日、お引越しが好きだという一人暮らしの女性の引っ越し作業に伺ったときのこと、2LDKの一部屋に前回、前々回のときに梱包したであろう段ボールがそのまま残されておりました。
リビングにも同じように段ボールはありました。
その数10箱ほど。
私はお客様がご自分で梱包されたのかと思いましたが、よく見ると段ボールは他社様のものですし、箱が経年劣化で色褪せ、どことなく古びているのです。
開梱した形跡は感じられなかったので、おそらく今まで開けられることもなかったのでしょう。
そして、箱の外側には何の表記もありませんでした。
お客様に「中は何が入っているのですか?」と聞いてみましたが、「わからない」ということで、了承を得て開けてみたところ中身は冊子、資料、料理メモや習い事のテキストといった紙類、どこかでもらったのであろう景品の数々。
きっとそれらを梱包したときには捨てられないものだったはずだし、「いつか使うかも」と思われたのでしょうが、月日が経つうちに忘れ去られたようです。

捨てるための名文句?

「前の引っ越しのときに入れっぱなしにしたままの段ボールはそのまま捨てなさい」「いつか、は来ないから捨てなさい」一度はこのフレーズを耳にされたことはあると思います。
目新しくもない当たり前の言葉です。
心にも響かないことでしょう。
ところが、それを知っていたはずの私自身もお客様と同じことをしてしまいました。

一年前、一人暮らしの父が他界し、一人っ子の私に地方の実家丸ごと一軒の片付けが待ち受けていました。
買取っていただけるものは買取っていただき、それ以外の遺品を分別してはゴミの日に合わせて出す、の繰り返しでした。
壊れているものは遠慮なく捨てるのですが、まだ使えるもの、綺麗なものは捨てるには忍びなく、かといって売れるような品物でもなく、もったいない気持ちがむくむく。
「これは捨てられない」「いつか使うかも」が始まり、段ボールに詰めては東京の自宅へ送りました。
少しずつ送っていたので気付かなかったのですが、東京に戻って驚きました。
私の部屋は段ボールが占拠して足の踏み場もないほどに。
段ボールは合計10箱。
しかも、「すぐ開ける」つもりでいたので何が入っているのか表記もしなかったため、ほんの少し前に梱包したばかりなのに、恥ずかしながら何が入っているのやらさっぱりわからなくなっていました。
段ボールに表記するのは基本中の基本。
深く反省したのは言うまでもありません。

東京に戻ると日常の生活が待っていますから、段ボールを片付ける時間がなかなか取れません。
仕方なく積み上げたまま放置です。
見苦しい箱が視界に入りますが見ないふり。
もともとそれがなくても困らない生活をしていたわけですから、急いで開ける必要はないわけです。
もし、保管する場所があるご家庭なら、こういった段ボールは部屋の片隅に置いたままになるのかもしれません。

大事だと思っていたのに

ある日、段ボールの隅っこに小指をぶつけて痛い思いをしたのを機に開梱したところ、なんでこんなものをわざわざ送料を使って東京に送ったのかというものばかり。
花瓶一つとってみても、実家の日本家屋では年代物で高級そうに見えていたものが、東京のモダンな家に置いてみると、薄汚れ古ぼけた安っぽい花瓶に見えました。
あんなに「これは捨てられない」と持ち帰ったものが、どれもこれも馴染まないのです。
「いつか使うかも」と思ったタオル、石鹸、洗剤といった日用品も使い終わるのに何年もかかるだろうし、そもそも気に入ったものではありません。
「まだ使える」というだけで、気分良く使いたいと思えるものはありませんでした。
結局10箱中、9箱分は寄付をして、手元に残したのは重要書類と数枚の写真のみという本当に大切なものだけ。

そもそも段ボールは何年間も保存に耐えられるようには作られていません。
そしてなんといっても膝くらいの高さに物があることはとても危険です。
それが原因で怪我をしてしまっては元も子もありません。
それから段ボールは保温性に優れているので、長らく同じ場所に置いておくと害虫の住処となる可能性大です。
段ボールは引越し作業の相棒ですが、別の役割を与えたくはないですね。
「いつか…は来ない」のです。
もしもあなたの家の中に開かずの段ボールがあるなら、今すぐそのまま処分してはいかが?

トランスフォーマーなら

面倒なお片付けはお任せください。
重たいものを移動したり、一つひとつ分別される必要はありません。
お客様にご負担をかけることなく、そのまま要らないものは回収します。
また、わたくし達がお客様と一緒に、一つひとつ確認しながら分別のお手伝いをさせていただくこともできます。
「いつか片付けよう」と思われていたことを、わたくし達が今すぐお手伝いさせていただきます。