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健康寿命を延ばすことは大切ですか?

長寿王国日本

健康寿命世界一の日本。WHOが発表した2021年版世界保健統計(World Health Statistics)によると、日本の男女平均健康寿命は74.1歳で世界のTOPです。
男女別でも日本は一位で、男性が72.6歳、女性が75.5歳となっています。

健康寿命とは、日常的・継続的な医療・介護を必要とせず、自分の心身で生命維持し、自立した生活ができる生存期間のことです。
2021年7月30日に厚生労働省が発表した平均寿命は、男性が81.64歳、女性が87.74歳となり、過去最高を更新しています。
長生きできるかどうかは経済状態に深くかかわり、戦争や食糧難のある低所得国では世界平均より10年近く短くなると言われています。
経済的に豊かで平和な日本が長命なのは頷けます。

自立した生活を送れる健康寿命と平均寿命との差は、男性は約9年、女性は約12年あり、健康を損なってからの期間がそれだけある、ということになります。
健康寿命をできるだけ伸ばして平均寿命に近づけ、健康なまま人生を終えられるのが理想ですね。

都道府県ランキング

この健康寿命は都道府県ではどこが一番長いのでしょうか? 厚生労働省は各都道府県における健康状況を調査するため、「都道府県平均寿命ランキング」と「都道府県健康寿命ランキング」を数年に1度発表しています。

都道府県 平均寿命ランキング

男性 女性
順位 都道府県 順位 都道府県
1 滋賀県 1 長野県
2 長野県 2 岡山県
3 京都府 3 島根県
4 奈良県 4 滋賀県
5 神奈川県 5 福井県
出典 : 厚生労働省『平成27年 都道府県別生命表』

都道府県 健康寿命ランキング

男性 女性
順位 都道府県 順位 都道府県
1 山梨県 1 愛知県
2 埼玉県 2 三重県
3 愛知県 3 山梨県
4 岐阜県 4 富山県
5 石川県 5 島根県
出典 : 厚生労働省『第 11 回健康日本 21(第二次)推進専門委員会 資料』

※ 熊本県は2016年熊本地震の影響によりデータなし。

この表を見てわかるのは平均寿命と健康寿命のランキング上位都道府県が必ずしも同じではないということです。
男女とも健康寿命上位に山梨県と愛知県がランクインしています。
ということは、両県ともに寿命を迎えるまで健康で暮らせているということですね。
前回の調査では健康寿命上位ランキングに静岡県が挙がりました。
そのため、緑茶に含まれるカテキンが話題になったことも記憶に新しいと思います。

人生100年時代ということは

いま人生100年時代と謳われるように、医学進歩の恩恵で人々が健康で長生きできるようになったのは事実です。我が国では高齢化が進んでいます。
「団塊の世代」が75歳以上となる2025年には3,677万人に達し、2036年には高齢化率は33.3%、3人に1人は65歳以上となります。その後も高齢化率は上昇を続け、医療・介護費は増大し続けるでしょう。

SDGs目標3

2015年9月ニューヨークの国連本部でSDGs(Sustainable Development Goalsの略。持続可能な開発目標)が採択されました。
17の目標のうち、目標3に「すべての人に健康と福祉を」があります。
SDGs目標3における日本の優先課題は「健康寿命を延ばすこと」で、厚生労働省は2040年までに健康寿命を3年延ばすことを目標に掲げています。
なぜなら健康寿命が延びると本人の生活の質(QOL)の向上はもとより、地域の活性化につながり、結果的に医療・介護費の増加を抑えることができると期待されているからです。
医療費の側面から見ても健康寿命を延ばすことは重要課題であり、喫緊課題となっています。

政府の取り組み

いま、健康寿命と平均寿命の差を少なくすることに関心が高まっています。
健康寿命を延ばす秘訣はどこにあるのでしょうか。
政府は健康寿命延伸プランで多岐にわたり具体的な取り組み方法を掲げています。
それは特別なことではなく、「適度な運動」「適切な食生活」「禁煙・受動喫煙防止」「健診・検診の受診」など、若いときからの生活習慣病予防が欠かせないと提言しています。
「健康寿命を延ばす方法」と検索すれば、数多くヒットすることからも考えられるように、国・地方自治体、民間企業に至るまで様々な方面から健康寿命の延伸に取り組んでいます。
一方で医療経済学の多くの研究によって、予防医療による医療費削減効果は限界があると言われていることにも耳を傾ける必要があると思います。

健康という名の優生思想

人々の関心が健康に寄せられ、日本では衰え知らずの健康ブーム。
健康ビジネスはますます加速していくことでしょう。“ピンピンコロリ”が理想の生き方だと耳にもします。
なぜこうまで人々は「健康」を崇めるのでしょう。
そこに微かに潜んだ優生思想を感じてしまうのは私だけでしょうか。
確かに人生の最期を迎えるその日まで大した病気もせず、自分の身体に何の制約も制限もなく、好きなものを食べて飲んで自由に動けることは何物にも代えがたいと思います。
健康は生きていくうえで最上のものかもしれません。
個人の努力において手に入れられるものかもしれません。
しかし健康体になりたくても、遺伝要因、外部環境要因で個人の責任に帰することができない要因もあることを忘れてはいけないと思うのです。

健康について考える

最後に健康について考えてみたいと思います。
一般的に「健康」と聞いて体の健康のことを思い浮かべる人が多いと思いますが、「健康」とは何かについて、世界保健機構(WHO)憲章にはこのように書かれています。

“健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。
人種、宗教、政治信条や経済的・社会的条件によって差別されることなく、最高水準の健康に恵まれることは、 あらゆる人々にとっての基本的人権のひとつです。”

引用: 「世界保健機関憲章前文 (日本WHO協会仮訳)」