12トンの不用品処分
電車内の広告にふと目が留まりました。死を豊かに? 生を豊かにならまだなんとなくイメージできますが、その対極である、生を閉じる「死」を豊かにとはどういうことだろう。
弊社は高齢者専門の引越と片付業務を営んでおります。高齢者施設のご入居には自宅売却を伴う方がほとんどです。そのためご自宅の片付けを承るのですが、こんなお客様の引越と片付けを担当させていただきました。
そのお客様はその家で生まれ育ち、ご結婚され、ご両親と同居されていたそうです。二世帯同居時代の生活用具一式もそのまま残っており、不用品処分は2トントラック6台分、総量12トンとなりました。
整理上手に収納上手
一見、物が少なそうに見えたのですが、すみずみまで整理整頓が行き届いていたこともあり、昭和時代の奥行きのある押入れには驚くほどたくさんの物が収まっていました。市販の収納用具を使うことなく空き箱を利用され、どこを開けさせていただいても収納見本のように完璧に整えられていました。私がこれまで担当させていただいた方のなかで断トツの美しさ。整理収納アドバイザー勉強中の私はただただ感動しました。
しがらみからの解放
そのため、物を大切になさるご夫妻の施設入居の荷物は相当な量になるだろうと想像していたのです。ところが私の予想に反して、単身入居かと思うほど施設に持っていかれる物が少なかったのです。お荷物は厳選に厳選を重ね、しっかり吟味された物だけ。搬入の終わった施設のお部屋はすっきりしておりました。施設の大きな明るい窓も相まって、ご夫妻の晴れやかな笑顔にお二人のこれから先の人生も輝いて見えました。
実は処分した物の中に結婚式の写真がありました。一応お伝えしておきますとご夫妻はお互いに名前で呼び合い、始終お互いを気遣い合う仲の良いご夫婦です。アルバムを施設に持っていかれる方が多いなか、それさえも手放されていたのです。ここまで潔く手放すことができるなんて、シンプルにすごいと思いました。まさに物より思い出を選択されたのでしょう。
家の片付けというしがらみから解放され、残された余生を身軽に生きる。それは「死を豊かに」につながると感じました。